富山大学と学校法人荒井学園,魚津市は,地域に残り,地域を支える若者育成を推進するための連携協力に関する覚書を締結した。魚津市役所でおこなわれた締結式では,富山大学の鈴木基史地域連携推進機構長,新川高校を運営する学校法人荒井学園の荒井公浩理事長,魚津市の村椿晃市長はじめ,関係者・報道関係者等約20名が参加する中おこなわれた。「高校」「大学」「行政」の3者が連携の枠組みを構築して「地域人材育成」「地元定着」をテーマとした調査研究及び「地域課題解決型キャリア教育」の実証実験を実施することで,地域に誇りを持つ人材の育成を推進し,地域力の強化につなげる取組を進めていく。同様の覚書を締結するのは全国的にも珍しく富山県では初めてとなる。
三者の協定締結に至るまでの経過について報告。魚津市の年齢別人口移動で高等教育機関への進学による転出過多の現状を示し,Uターンの促進や流出への歯止めにはこれまでの人口誘引施策だけでなく新たな政策が必要となったと説明。各者の視点から明らかとなる必要性について報告。荒井学園新川高校の濱元教頭は,新川高校の通学生の現状,進学就職の状況,新川地区からの生徒数減少を説明し,地域を愛する人材を育てる取り組みに力を入れ地域人材育成機関としての高校の位置づけを再認識したと報告。富山大学金岡室長は,魚津三太郎塾の次のステップとして大学と魚津市と高校で,地域に残り地域を支える若者を育成する新しい形を考えていく社会実験をおこなうと話し,学校を核として地域力を強化する調査研究を支援し,大学が現在取り組むCOC+で得たデーターやノウハウをもとに地域に必要とされ魅力ある人材教育をしていくことを地方創生につなげ,この新しい試みで得た成果をCOC+の連携を通してALL富山へ拡げていきたいと説明。
魚津市の立場から前田副班長が,人口減少・定住政策の面から新川高校は年100名の地域住民を輩出する人材育成拠点であり,周辺自治体から高校生を就学させる存在であることから高等教育機関を活用した人口減少歯止めへの新たな政策として捉えたと説明。取組内容について,連携の覚書を交わすことでそれぞれのメリットが生じていくと連携チャートで紹介。今年度は,新川高校が取り組む地方創生という形で様々な事ができないかと考えている。Nカフェの拡大や魚津再生論のカリキュラム化などを検討しているが,今年度は,取組計画(仮説)を立て,幾つかの実証実験に取り組み,来年度,再来年度の取組に発展させ基礎をつくるとした。目指す効果は,新川高校の生徒の課題解決能力を向上させ,進路選択を的確にすることで離職率を低減させること,高校の即戦力養成教育機関としてのブランド創造などの効果だ。また,市は将来の地域構成員の育成と地域コミュニティ持続可能性の向上を,大学はCOC+幹事校として県内高等教育機関卒業者の地元就職率向上に寄与することを目指すと説明。主役は生徒たちであり,できることできないことの認識や感謝される体験,学んだことが役立つ体験,やりたいことの発見を魚津市で体験することを目指していると話し,魚津市の人口動向で社会減ゼロへ近づけていきたいと報告した。
村椿晃市長 荒井理事長 鈴木機構長の三者が覚書書面にそれぞれ署名をおこない,連携協力に関する覚書の締結を完了した。
締結した覚書を手にした三者の記念写真と報道写真の撮影がおこなわれ,三者はお互いに握手を交わし連携を確認した。
「三者間で協定締結でき嬉しく思う。我々は地方創生に向けて努力している。特にCOC+は期間内に県内教育機関卒業者の地元就職率10%アップという高い目標に取り組んでおり,今年は富山大学において40.6%(H26年度比+1.9%)が富山に残るという良い結果を出している。地元と県内高等教育機関の信頼関係をつくり,その信頼の循環で,学生を集め人材をつくり結果として地元が活性化するという取り組みであるが,県内高校生が地元の高等教育機関へ残ってもらうことが重要であることがわかった。地元から必要とされ選んでもらえる大学となるため,自治体と様々な連携協定を結び魚津市とは良い結果をつくっている。魚津をフィールドにした授業を受けた県外学生から魚津市に就職したいという話を聞き教育の大切さが身に染みてわかった。入口として県内小中高との結びつきは大切で,今回の協定は,社会実験であり挑戦である。今回の協定は真の地方創生のための第1歩であり,三者間で英知を出し,乗り越えて県内へ良い波及効果を生み出したい」